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第五章・6
「今でも、お兄さんのこと好きなんでしょ? 愛してるんでしょう?」
さらに准は、問い詰めて来る。
茜は怯みながらも、素直になる道を選んだ。
「愛しているよ」
「ひどいよ」
「なぜ?」
他に好きな人がいるのに、僕の兄さんと結婚しようなんて。
「僕の兄さんが、可哀想だよ!」
「准くん……」
ああ、この少年は、心から兄を愛している。
だけどね、准くん。
「准くんは、どうなの? お兄さんを愛している。でも、他にも恋人がいるでしょう?」
准より長く生きたぶん、茜は恋に敏感だった。
お見合いを壊そうとして准が引き連れて来た、協力者。
秀斗は准を愛している、と、察知していた。
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