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第五章・9

 夕食も摂らずに、自分の部屋に閉じこもっている准。  丞は、そんな彼のドアをノックした。  心のドアを、ノックした。 「准、開けてくれ」 「……」 「お前の好きな『バード』のワッフル、買って来たぞ」  そおっと、ドアが開いた。  丞は、ゆっくり准の部屋へ入った。  准はベッドの上で、枕を抱えてふてくされていた。  眼が赤い。  泣いていたに違いない。  丞は、准の隣に腰かけた。 「はい、ワッフル」 「……ありがと」  もぐもぐと、まだ温かいワッフルを食べる准は、丞に言いたいことを頭の中で整理していた。  整理しようと、していた。  でも、できない。  言いたいことが、たくさんあり過ぎる。

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