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第五章・10
「ごちそうさま」
気軽に言える言葉を選び、准は丞からマグカップを受け取った。
冷たいココア。
(僕が元気のない時、兄さんはいつもココアを作ってくれたね)
こくりと飲むと、また涙が零れた。
「泣くんじゃない」
「だって。だって、兄さんがお見合いなんかするから」
「俺はもう大人だ。結婚くらい、するさ」
「しちゃ、ヤだ」
「准」
准は、体ごと丞にぶつかって来た。
「結婚なんかしちゃ、ヤだ! 兄さんは、いつまでも僕の兄さんでいなきゃ、ヤだ!」
「おいおい、俺はいつまでも、お前の兄さんだぞ? 別に、縁を切るって言ってるわけじゃない」
そういうんじゃなくて。
そういう意味じゃなくって!
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