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第五章・11
「兄さん、キスして」
准は、潤んだ瞳で丞を見上げた。
しかし、その返事は。
「ダメだ」
「何で!?」
「兄弟だからだ。血のつながった、兄弟だからだ」
「昨日まで、してくれたのに! 海野さんのせいだね!?」
「それは違う」
丞は、准を抱きしめた。
冷たく冷えた、准の身体。
温めてあげたい。
愛し合って、熱くしてあげたい。
「……自分で決めたことだ。兄さんは、お前を。准を不幸にすることはできない」
(海野さんが言ってたことと、同じだ)
「僕は、兄さんが好き。それだけで、幸せなのに」
「秀斗は、どうするんだ?」
「秀斗も好き。いけない?」
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