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第五章・13
「今夜は、もう寝なさい」
泣きながら、うとうとし始めた准に、丞は声をかけた。
「一緒に、寝て」
「それは、ダメだ」
「寝るだけ。一緒に眠るだけでいいから」
そばに居て、と泣く准に、丞は抗えなかった。
泣かせたのは、俺だ。
准を幸せにしたいと、誰より願っているはずなのに、誰よりこいつを泣かせている。
パジャマに着替え、丞は准のベッドに横になった。
ぎゅうとしがみついて来る准を柔らかく抱いて、瞼を閉じた。
「おやすみ、准」
「おやすみ、兄さん」
その晩、准はなかなか眠れなかった。
兄さん、秀斗。
そして、海野さん。
幸せと、不幸せと。
でも、今この瞬間は、僕は幸せの中にいるはず。
兄さんと一緒だから。
兄さんの腕の中に、いるんだから。
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