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第六章・12
『そして、できれば……、准を抱いてやって欲しい』
「え!?」
汗をかいた手でスマホを握りなおし、秀斗は言葉を詰まらせた。
「あの、それって」
『俺以外の男を、秀斗をしっかり准に擦り込んで欲しいんだ』
頼む。
それきり、電話は切れた。
(一体、どういうことだろう)
やはり昨夜、准とお兄さんの間に何かあったんだろうか。
(お兄さんは、准から離れようと必死になってるんだ、きっと)
だがそれは、茨の道に違いない。
もし自分が、逆の立場だったら苦しいだろう。
「お兄さん……」
大人って、こんなに辛いものなんだ。
秀斗はしばらく、動けなかった。
スマホを握りしめたまま、立ち尽くしていた。
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