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第七章 兄さんと他の人
放課後を待ちかねて、秀斗は准の元へと走った。
部屋に通され見たものは、ベッドの上で大人しく寝ている准の姿だった。
「ほら、准。お見舞いにお花いただいたのよ」
「え~! ありがと、秀斗!」
可愛らしい籠に飾られたアレンジメントの花々は、甘い香りで准を癒した。
花とおやつを置いて母が部屋を出ていくと、准は上半身を起こした。
「起きても、大丈夫なの?」
「平気。少し、眩暈がするけど」
病院でお薬を強くしてもらうついでに、注射までされた、と准は唇を尖らせた。
「僕くらいの年齢で、あんまりフェロモンが強いと、体に悪いんだって」
「そう」
秀斗は、ベッドサイドに置かれた丸い小さなソファに腰かけた。
「うわ。このソファ、やけに快適」
「ふふ。ヒトをダメにするソファ、だよ」
そして僕は。
「人をダメにするΩ♡」
准は、秀斗に腕を伸ばした。
「来て」
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