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第七章・2
秀斗はふらりと立ち上がり、ソファからベッドへ移動した。
准の傍に座ると、甘い香りがする。
「フェロモンは、抑えてあるんじゃなかったっけ?」
「そうだよ」
「それにしては……、いい匂いだなぁ」
「コンディショナーの香りだよ」
シャンプー変えたんだ、と屈託のない准の笑顔。
その香りに、その笑顔に、ころりと参ってしまいそうになる。
秀斗は、自分を心の中で叱りつけた。
(今迄みたいに、単純に准を求めちゃいけない!)
お兄さんに、託されたのだ。
おままごとみたいな、幼い愛情では准を支えきれない。
お兄さんを、安心させられない。
「どしたの? 秀斗」
「え?」
「何だか、難しい顔」
「そんなこと、ないよ」
そっと、秀斗は准の手を取った。
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