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第七章・5
「ほら、お小遣い。あげるから、秀斗と一緒に選ぶといい」
「え……?」
丞の手には、数枚の万札が。
「お前は秀斗と付き合ってるんだから、彼の好きな服を着ると喜ばれるんじゃないか?」
むうう~ッ、と途端に准は機嫌を損ねた。
「僕が欲しいのは、お金じゃないよ! 兄さんと過ごす時間が欲しいんだ!」
「わがまま言うなよ。それに、次の日曜は俺にも約束がある」
「また部長さんとゴルフ!? 部長さんと僕、どっちが大事なの!?」
きゃんきゃんと噛み付く准は、次の言葉で黙ってしまった。
「海野さんと、食事の約束だ」
嘘。
まだあの人と、付き合ってたの?
「兄さん、本気であの人と結婚するつもりなの?」
「そのつもりだ」
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