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第七章・8

「ホテル……」  准の機嫌は、さらに悪くなった。  そんな准に、秀斗が慌ててフォローを入れる。 「ホテル、ったって、別にラブホテルじゃないんだから。ね!」  きっとラウンジでお茶でも飲むつもりなんだ、となだめた。 「そうかなぁ」 「そうだよ!」  じゃあ、ラウンジまで行ってみよう、と准はすたすたと歩く。 「待ってよ、准!」  落ち着いた老舗のホテルに、やや不釣り合いな高校生が二人、入って行った。  秀斗の言う通り、丞と茜はラウンジでお茶を飲んでいた。  何やら楽しそうに話して笑っている。  少し離れた観葉植物の陰から、准はその様子を見ていた。 「兄さんのバカ……」 「准~、そろそろ移動しようよ」  秀斗は准の頬を両手で挟むと、自分の方を向かせた。 「准と今デートしてるのは、俺なんだよ? もっと俺を見てよ」 「秀斗」  彼がこんな風に言ってくるなんて、珍しいことだ。

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