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第七章・10
丞は、ホテルの一室で茜と口づけを交わしていた。
ぎこちない茜の舌を捉えると、丞はやんわりと撫でるように舐めた。
すくむような、茜のキス。
身体も固く、構えているように感じる。
茜の腰に腕を回す丞に反して、茜はこぶしを握り締めて堪えている。
唇を離し、丞はできるだけ優しく囁いた。
「気が乗らないなら、今日はやめにしようか?」
「ごめんなさい。でも、いずれは通る道だから」
兄以外の男を知らない、という茜を今から抱く。
丞は彼に対して、真摯に向き合っていた。
この見合いがうまく行こうが行くまいが、茜には他の男に抱かれたという、履歴を作ってあげなければならない気がしていた。
兄への愛情の呪縛から、解き放ってあげなければならない気がしていた。
丞は舌を茜の胸へと滑らせると、その小さな乳首をつついた。
「んっ」
「声、出してもいいよ」
手のひらで素肌を撫でさすりながら、舌先は胸の尖りを掘り起こす。
ささやかだった乳首はやがて、つんと反り返った。
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