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第八章・3
「もしもし、母さん?」
「どうしたの、丞。何かあったの?」
「准のことなんだけど」
学校でも同じように、ろくに食事を摂っていない准の様子を伝え、病院へ連れていくように頼んだ。
「解った。今日、帰ったら連れて行くわ」
「お願いします」
それにしても、と電話口から母の笑みが聞こえた。
「ホントに丞は、准のこととなると心配性ね」
「昔から、そうでしょう」
そう。
子どもの頃から、准が大好きだった。
大好きだったから、心配で。
そして、今でも大好きで。
(いけない)
もう、准とはただの兄と弟なんだ。
これ以上の愛情は、感じてはいけないんだ。
それでも今夜は早く帰ろう、と思いつつ、丞は電話を切った。
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