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第八章・8
一時間ほどドア越しに言い争いを続けていた親子だったが、根負けした両親は一階へ降りて来た。
リビングには、うなだれてソファに掛けている丞の姿が。
そこへ、父が近づいた。
「……そんなに好きだったのか、准のことが」
「はい」
「抱くほどに?」
「すみません」
「なぜ、避妊しなかった!」
胸倉をつかまれたが、丞は抵抗しない。
間に、母が割って入った。
「お父さん、やめてください! ね、丞。あなたから、中絶するように説得してくれないかしら? 丞の言うことなら、准も聞くと思うの」
中絶。
丞は、自分を心から呪っていた。
いくらフェロモンに当てられて前後不覚になっていたとはいえ、スキンを着けずにΩである准を抱くとは。
結局、一番傷つくのは准なのだ。
体も、心も。
ゆらり、と丞は立ち上がり、二階へと昇って行った。
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