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第八章・9

「准、俺だ」  ドアの向こうから、兄さん、と声がした。  細く開く、ドア。  隙間から覗く准は、眼を真っ赤に泣きはらしていた。 「入るぞ」  ドアを開け、丞は准の部屋へ入った。  途端に、准が抱きついて来た。  抱きついて、わんわん泣いた。  その場にしゃがみ込み、丞は泣くに任せていた。  ショックだっただろう。  悲しかっただろう。  Ωにとって、愛する者の子を宿すことは、歓びだ。  だのに、それが受け入れられないなんて。  誰も祝福してくれないなんて。  せめて、俺は。 「准、俺の赤ちゃん迎えてくれて、ありがとう」 「秀斗の赤ちゃんかもしれないよ」 「それでも、ありがとう」 「兄さん……」  泣き疲れて眠ってしまった准をベッドに運び、丞は行く先を考えた。  しかし、靄がかかって何も見えなかった。

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