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第八章・12

 紫煙を吐いて、丞はぼそぼそと話した。 「秀斗が父親に? 18歳の高校生でか? 収入も無しにか」 「そ、それは。家族に訳を話して」  親には言うな、と鋭く突き放された。 「佐々木外科の跡取りが、高校生でΩを孕ませた、なんてスキャンダル、ぞっとしないぜ」 「でも!」 「お前はこれまで通り勉強して、医者になれ。優秀な外科医に」  ものは考えようだ、と丞は秀斗をなだめた。 「数年経って、子どもが秀斗そっくりになったら? それまで俺に預けておく、というのはどうだ」  どう見ても秀斗の子、と解れば。  そしてそれまでに、お前が一人前になっていれば。 「親権は秀斗に譲ろう」 「お兄さん……」  こういうことは、大人に任せておけばいい。  そう、丞は言った。

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