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第八章・14
朝、登校する時間帯に、秀斗は准からの電話を受けた。
『おはよう、秀斗。今、いい?』
「うん。電車はまだ来ないから、大丈夫だよ」
それより。
「准は、今どこ? まだ家にいるの?」
『うん。今日、学校休むから。秀斗と一緒に、電車に乗れない』
どうしたの、と秀斗は勢い込んでいた。
昨晩、准の妊娠を聞かされたばかりだ。
何か、体に異常が!?
『ちょっと、お腹が痛いだけ。平気だよ』
「そう……」
わずかな沈黙の後、准が話しかけて来た。
『あの、ね。僕、赤ちゃんができた』
ああ。
お兄さんの言ったとおりだ。
昨夜は、ひどく寝付けなかった。
お兄さんの、たちの悪い冗談じゃないか、と思い込もうとしていた。
だが、本当だったのだ。
准本人の口から聞くと、ひたひたと実感が湧いて来た。
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