121 / 172

第八章・14

 朝、登校する時間帯に、秀斗は准からの電話を受けた。 『おはよう、秀斗。今、いい?』 「うん。電車はまだ来ないから、大丈夫だよ」  それより。 「准は、今どこ? まだ家にいるの?」 『うん。今日、学校休むから。秀斗と一緒に、電車に乗れない』  どうしたの、と秀斗は勢い込んでいた。  昨晩、准の妊娠を聞かされたばかりだ。  何か、体に異常が!? 『ちょっと、お腹が痛いだけ。平気だよ』 「そう……」  わずかな沈黙の後、准が話しかけて来た。 『あの、ね。僕、赤ちゃんができた』  ああ。  お兄さんの言ったとおりだ。  昨夜は、ひどく寝付けなかった。  お兄さんの、たちの悪い冗談じゃないか、と思い込もうとしていた。  だが、本当だったのだ。  准本人の口から聞くと、ひたひたと実感が湧いて来た。

ともだちにシェアしよう!