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第八章・15

『秀斗、嬉しい?』 「あ、もちろんだよ。俺の子、だよね」 『でも、もしかしたら、兄さんの赤ちゃんかもしれない』 「准……」  ごめんね、と准は涙声だ。 『でも、秀斗のことも大好きなんだ。二人とも、愛してるんだ』 「責めたりしないよ。それより、体を大切にしてくれよ?」  ありがとう、と言う准の声は、わずかに明るくなっていた。 「あ、電車が来た。准、俺行くよ」 『うん。いってらっしゃい』  秀斗は震える指で、携帯の電源を切った。  赤ちゃん。  准の、赤ちゃん。  俺の、赤ちゃん。  だけど、お兄さんの赤ちゃんかもしれない。  人波に飲まれ電車に乗り込んだが、頭の中はそのことでいっぱいだった。

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