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第八章・18

 そんな馬鹿な話があるか、と父は激昂した。 「どこの世界に、兄弟で一緒になるために縁まで切る馬鹿がいるか!」 「丞、いっときの判断で人生を決めるのは止めなさい!」  しかし、丞は引かなかった。 「いろいろ考えました。決して思い付きなんかじゃありません」  これしかないんです、と丞は両親に頭を下げた。 「父さんと母さんには、本当に感謝しています。まだ恩返しもできていないのに、申し訳ありません」 「黙れ! この話は、聞かなかったことにしてやる。頭を冷やせ!」 「お父さん!」  ソファを立ち上がり、書斎へ引っ込んでしまう父を、母が追った。  リビングには、頭を下げたままの丞が残された。

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