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第八章・19
「父さん、母さん……」
俺は、馬鹿だ。
だけど、准を幸せにしてあげるには、この道しかない。
そこへ、ポケットの携帯が鳴った。
「准?」
出てみると、か細い声がした。
「兄さん、お腹が。お腹が痛いよ……」
「解った。すぐ行く」
書斎の前で立ちすくんでいる母に、丞は急いで声をかけた。
「母さん、准がちょっとおかしいんです!」
「准が?」
二人で准の部屋の前に行くと、青い顔をして准がドアにもたれ座っていた。
「准、どうしたの!?」
「母さん、病院へ行こう。俺が、運転する」
丞は准を抱くと、急いで階段を降りた。
母も、付いて来る。
慌ただしく出かけていく家族の気配を耳に、父は書斎で涙を拭いていた。
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