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第十章・9

   目の前が真っ白でチカチカする。  兄さん、熱い。  僕の内に、熱い兄さんのものが、こんなにいっぱい……。  無意識のうちに、准は両掌を腹の上に置いていた。 「兄さん」 「准」  そっと、丞は准の体内から去った。  小さなお腹に収まり切れなかった体液が、とぷりと流れ出る。  丞はそれを、ウェットティッシュで丁寧に拭いてあげた。 「ありがと、兄さん」 「いいよ」  まだ息の荒い准を抱き寄せ、丞は頬ずりした。 「ふふっ。髭が痛いよ」 「そう言えば、お前には髭が生えないなぁ」  Ωだからかな、と准は言った。 「そしたら、髪もどんどん薄くなっていくのかな」  兄さん、僕が若禿になっても好きでいてくれる?  そんなことを言う准の鼻を、丞はつまんだ。 「大丈夫だ。どんなお前になっても、俺はずっとお前のことが好きだ」 「兄さん、大好き!」  それは久々に聞く、准の弾んだ声だった。

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