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第十章・11

「准くんは、どう思っているんですか? 3年間、待てるんですか?」  秀斗くんと一緒に、という可能性は、と茜は問うてきた。 「解りませんが、俺にはもうあいつだけなんです。色々ありましたが、以前の愛し方とは違います」  そう言う丞の瞳は、真っ直ぐ前を向いている。 「准くんのこと、真剣に愛しているんですね」 「そうです」  自分の気持ちを抑え込んでまで、准から離れようとしていた丞。  その彼が、本気になった。  現実社会で、地に足を付けて准を愛すると誓っている。 「では僕は、振られたということですね」  ふふっ、と笑う茜は、口の中で舌先を必死で噛んでいた。  こうすれば、涙が止まる。  将来に向けて歩み出したこの人に、心残りを与えてはいけない。  罪悪感を与えては、いけないのだ。

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