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第十章・12

「海野さんには、本当に感謝しています。あなたのおかげで、俺の本当の気持ちが解りました」 「感謝なんて。それは、こちらのセリフですよ」  兄が全てだった、狭い世界。  丞にひととき愛されたおかげで、視野が広がったと茜は言った。 「またお見合いをして、素敵なパートナーを見つけます」 「幸せを、祈ってます」 「ありがとう」  出ましょうか、と言う丞に、茜は首を振った。 「僕はもう少し、ここに居ます」  ためらったが、丞は会計を済ませるとカフェから出て行った。

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