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第十一章・3
3年目の前に、准の卒業がある。
父も母も、卒業式に出席してくれた。
(兄さんにも、来てほしかったな)
今頃、お仕事で忙しいんだろうな。
しかし、昨晩電話があった。
『卒業、おめでとう』
『愛してるよ』
そして。
『秀斗に、ありがとうと伝えてくれ』
兄さん、どうして秀斗に『ありがとう』って?
式が終わり、最後のHRが終わり、クラスメイトと別れた後に、准は秀斗と会っていた。
「何? 渡したいもの、って」
「これ。ホワイトデーのプレゼント」
わあ、と准は思いもしなかった贈物に喜んだ。
「ありがとう!」
「3月14日には、もう会えないだろ? だから、今渡すよ」
「あ……」
そうだ。
秀斗はすでに、京都の大学へ進学が決まっている。
今から、その準備で忙しいのだ。
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