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第十一章・6
「丞は、大丈夫かしら。車で駅まで、迎えに行こうかしら」
「落ち着きなさい、母さん。子どもじゃないんだから」
そわそわと、朝から落ち着きのない両親。
そんな姿に、准はくすりと笑った。
(3年を待ち焦がれてたのは、僕だけじゃなかったんだね)
ああ、早く。
早く帰って来て、兄さん。
そして、その腕で僕をぎゅっとして。
その時、玄関のドアが開く音がした。
「ただいま」
兄さんが、帰ってきた!
「兄さあん!」
ばたばたと廊下を駆け、准はまだ玄関のたたきに立っている丞の胸に飛び込んだ。
「准、ただいま」
そんな准を、丞は想いを込めて抱きしめた。
後に続いた両親は、そんな二人を見て微笑んでいた。
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