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第十一章・9
「兄さんは、もうずっと本社で務めるの? もう地方勤務は、ないよね?」
そんな准の質問に、丞は困った顔をした。
「実は本社で1年務めた後、今度は仙台へ出向することが決まってるんだ」
「嘘!」
准は、ビールの缶を思わず握りつぶしていた。
宴卓は、丞の部屋へ移っていた。
「転勤を繰り返して、昇進していく、というやつだ。准、付いて来てくれるか?」
当たり前でしょ、と准は身を乗り出した。
日本中を転々とできるなんて、素敵だよ、と眼を輝かせた。
「そして僕は、その土地土地の風景や伝承をカメラに収めるんだ。こんなにいいこと、ないよ」
「准」
「何?」
「大人になったなぁ、お前」
「それはそうだよ。あれから3年経つんだよ? 20歳なんだよ?」
そういう事じゃなくって、と丞は准に近づいた。
「精神的に、大人になった」
そして、唇を塞いだ。
3年ぶりのキスは素敵に甘く、激しく熱かった。
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