161 / 172
第十二章・2
丞が実家へ戻ってから、1年が過ぎていた。
形ばかりの勘当をしてもらいはしたが、そのまま梅宮の家で暮らすことを許された。
丞は、休日はなるべく家族と共に過ごすようにした。
3年間の別離は、家族をいっそう大切に感じる心を育てていた。
家族4人で花見に出かけ、海へ逝き、紅葉狩りを楽しみ、温泉に浸かった。
准は、それらの時間をていねいに写真に収めた。
カメラはデジタルではなく、フィルム式のものを選んだ。
この写真は失敗だから削除、なんてことのないように。
シャッターを切る瞬間瞬間は、かけがえのない、消しようのない時間なのだ。
例え変な写真でも、それは真実なんだから。
「准、お前こないだ父さんが酔った時の写真、捨てただろうな?」
「うん。捨てたよ」
実は嘘だ。
ちゃんと『裏アルバム』に、大切に取ってある。
母にこっそり預かってもらっている。
丞と准は顔を見合せ、にっこりと笑った。
ともだちにシェアしよう!