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第十二章・5

 バスを使い、髪を乾かし、さて。 「初夜だよ、兄さん!」 「もっと雰囲気を大事にしろよ……」  それもそうだね、と准はベッドの上にちょこんと正座した。 「ふつつか者ではありますが、今後ともよろしくお願いいたします」 「准でも、そんな言葉が使えるんだな!」 「勉強して、練習したもんね」  その言葉に、丞は胸がいっぱいになった。  勉強、とはいえネットで調べた程度だろう。  それでも、調べようと思ってくれたこと、そして練習してくれたことに深い感謝を覚えた。 「准、本当に俺のパートナーになってくれたんだな」 「うん」  いろいろあったね、と准は振り返った。  兄さんのお見合い、僕の流産、秀斗との別れ……。

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