4 / 8
第4話 拉致②
「では、失礼します。」
俺のなかでは、やっと踏ん切りがついたようだった。その時ふと気づいた。陸の姿が見えない。
「陸~帰るぞ~。陸~?陸!おい!どこだ!」
必死になって探していると、下になにかが落ちていた。これを見る限り、陸のものだと察しがついた。その袋のなかからでてきたものは、花か何かの種で、路地裏まで続いていた。
花の種の先には、人目につかないような倉庫があった。周りはもう薄暗い。どれ程時間がたったのかがわかる。灰の景色のなか、螺旋階段を上っていくと、子供の泣き叫ぶ声が聞こえた。陸だ!おもいっきりその名を呼んだ。さらに叫び声が大きくなった。もう、耐えられない。
バンッ!
「陸!」
そこには、男たちにつかまりひどい扱いをうけながらも、必死にもがいている陸の姿があった。目の焦点があってない故、ひどく衰弱しているのはまる分かりだ。
気づいたときには、俺の周りは殺人現場の一歩手前の有り様だった。多分全て俺がやったのだろう。だが、そんなことはお構いなしに、俺は陸の元へと歩み寄った。誰からみても怯えた表情。あの時外で待たせていなければ…と、後悔の念が渦巻く心を、自分でもおさえられなかった。
~~~~~~~~~
ああ、僕の名前を呼んでいる声がする…。誰かが近づいてくる。いやだ…もう、何もしないで…1人にしておいて…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…。
「陸ー!」
あ…この声…知ってる…あたたかい…
「陸!大丈夫か…!ごめんな…俺が1人にしたせいで…」
これは…僕の…一番大切な人だ…
「か、霞…さん…」
「!?陸…!気がついたか…!」
やっぱり…霞さんだ…僕の…一番大切な人…
ともだちにシェアしよう!