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「気付いた?」
「っ……!」
突然声がして顔を上げると、そこには部屋と同様に全く見覚えのない顔があった。
「おはよう、金髪の美少年!」
「だ、……れだ、あんた……?」
オレンジ色の巻き毛。白い肌に細っこい体。黒いTシャツ、黒いパンツ……こんな男、知らない。
「俺の名前はライだよ、よろしく。……えっと、美少年。君の名前は?」
名前。俺の名前――。
「あ……あ、れん……。……亜蓮、だ」
「アレンか、カッコいい名前だね!」
ニコニコと笑って、ライと名乗った男が俺の手を取り握手をする。
「ここはどこなんだ……?」
「皇牙の部屋だよ」
「コウガ……?」
頭の芯がきりきりと痛む。目の前が霞んで、息が詰まりそうになる。
「……、っ……!」
「だ、大丈夫、亜蓮?」
「あ、ああ……。少し頭痛がして……って、何だこれっ……?」
気付けば俺は、服はおろか下着まで何も身に着けていなかった。全くの全裸で布団の中にいたのだ。
いや、ただ一つ――首に嵌められた首輪と、そこから伸びる細い鎖……。それだけは変わらずに付いている。
……誰かにこの鎖を引かれた気がする。この鎖を引っ張られて、犬みたいに跪かされて、……
「うっ、……!」
「わわ、亜蓮しっかりして。痛み止めの薬持ってこようか」
「平気だ……」
「ちょっと待ってて。皇牙を呼んでくるから」
ライが慌てて部屋を出て行き、俺は痛む頭を撫でながらぼんやりと室内を見回した。見ればみるほどややこしい部屋だ。
モニターで流れているのは洋楽のヒットチャートなのか、俺は知らないがセクシーな衣装を着た金髪の女が歌いながら妖艶に踊っている。暑くもなく寒くもない。窓はあるが今は夜らしく真っ暗で、この部屋が一軒家なのかアパートなのかは分からない。
どうしてこんな所にいるんだろう。さっきのライという奴も全然見覚えがないし、皇牙という名前も知らない。どうやってここに来たんだろう。裸で、記憶もはっきりしない。胸のムカつきがないから酔い潰れた訳ではないらしいが、それならますますここにいる理由が分からない。
亜蓮――。
俺の職業は。そうだ、踊っていた……俺はダンサーだ。小さなゲイバーのストリップダンサーで、来る日も来る日もうんざりするほど踊っていて、その日の稼ぎから飯代と宿代を捻出していた。……思考がはっきりしないせいか、何だか全てが遠い過去のように思えてくる。
最後の記憶――確か店で仕事をした後に客と飲んでいた。テキーラのショットグラスをテーブルに叩きつけたのは覚えている。ソファに土足で乗って背もたれの部分に座り、煙草の煙が漂うフロアで俺は客の一人に誘われていた。
幾らでも払う。そう言われた。肩を組まれてホテルに行って、それから……
「っ……」
駄目だ。その先を思い出そうとすると、頭の芯に激痛が走る。
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