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 やがてネオン街の奥に見えてきた皇牙のナイトクラブ――「ダチュラ」。開かれた入口の両サイドにはガタイの良い黒服の男が立っていて、入店する客のIDをチェックしている。  客も派手なのばかりだ。半裸の青年にボンテージ姿のカップル。漆黒のドレスを着た、女と見紛うほど美しい男達――。  驚いたのは、そんな大人達に交ざってちらほらと子供の姿も見えるということだった。小学生くらいの少年が洒落たスーツを身にまとい、その辺を歩く客に愛想を振りまいている。どうやら彼らは客ではなく、従業員らしい。 「子供まで働かせてるのか?」 「子供だろうと働きたい奴は大勢いる。……お前がいた『世界』では、いなかったか?」 「………」  広く薄暗い店内にはダイヤモンドのような細かいライトがあちこちに光り、何語か分からないが耳に心地好く甘ったるい声の音楽が流れていた。  ソファの上で絡み合う男達。ガラス越しの壁の中で踊る男達。フロアの各所には人一人が乗れる程度の小さな円形ステージがあり、そこでも半裸の青年がポールに絡みつくようなスローダンスを披露している。  何だか甘い悪夢を見ているような気分だった。ガラステーブルの上で脚を開き、ペニスの形がはっきり分かるようなパンツを飢えた男達に見せつけている青年――その横を通り過ぎた瞬間、青年と目があって微笑まれた。  整然と並んだ高そうなグラス。アンティーク風のソファ。煌びやかなシャンデリア。  ……俺がいた店とは、規模からして全然違う。 「亜蓮。取り敢えずここがスタッフルームだ。なかなか広いだろ」  通された二階奥の部屋の中には、ステージ衣装を身に着けた青年達が水を飲んだり煙草を吸ったりしていた。化粧をしているせいもあるが、彼らは俺の目から見てもこの世のものとは思えないほどに美しい。ニコリと俺を見て笑う者もいればまるっきり無視する者もいて、俺は恥ずかしさに縮こまった。皇牙に借りたTシャツとハーフパンツ姿の自分が、酷くみすぼらしい存在に思えたからだ。

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