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「亜蓮!」 「亜蓮ー!」  スタッフルームに戻った瞬間、ライとニコラに飛び付かれて抱きしめられた。 「亜蓮! 凄かったぜ、お前! あんな風に踊れるの何で黙ってたんだよ!」 「はぁ、……あ、……ありがとう、ライ。……ニコラは、大丈夫なのか……?」  俺の胸から顔を上げたニコラが、目に涙を溜めながらかぶりを振る。 「ご、ごめんよ。俺、やっぱ緊張が凄くて、薬飲めば緊張もなくなって、楽しくハイに踊れると思って……」  俺は二人の肩を軽く叩いて体から離れさせ、ふらつく足取りで奥のソファへ向かった。取り敢えず座ってしまいたい。久し振りに、しかも突然全身の筋肉を使うことになって体中がガタガタだ。 「……はぁ、……」 「亜蓮」  低い声に視線を向けると、俺の横に皇牙が立っていて腕を掴まれた。俺の体を支えて背中に柔らかいタオルを羽織らせ、ついでに水の入ったボトルのストローを俺の口に咥えさせる。 「ん……、気持ち良い。生き返った」 「よくやってくれた、亜蓮。お前にこんな才能があったとは知らなかったぜ」 「……何ていうか……体が勝手に」  ライは笑っている。ニコラも目元を拭いながら俺を見ている。 「皆、お前を称賛している。俺達も客もな。……だが当のお前が、何故そんな辛そうな顔してんだ?」 「……す、少し休んだら、……トイレに、行きたい……」  俺は目を伏せ、震える手でタオルの端を握りしめた。皇牙の視線が俺の顔から体、体からもう少し下へとずらされるのが分かる。恥ずかしかった。俺が何故こんな顔をしているか、「そこ」見れば一目瞭然だからだ。 「ふ、……」  案の定それに気付いた皇牙が、唇の端を弛めて笑った。そして―― 「奥の部屋を使うぜ。お前ら、全員仕事に戻れ」  スタッフルームの更に奥、別の部屋へと繋がるドアを開けた皇牙が、中に俺を入れた。オーナー専用の部屋らしく、コンピューターに専用のモニターが三つ、その他書類ファイルや金庫なども置いてある。  それほど広い部屋ではない上、物でごちゃごちゃしていて更に狭く感じる。俺はファイルや収納ボックスが積まれたラックに背中を寄りかからせ、気まずい思いで俯いていた。 「そんなに恥じることねえさ。勃起が治まらねえってことは、お前がそれほど良いパフォーマンスをしたって証拠だからな」  皇牙の手が俺の頭に乗せられる。 「よく頑張った」 「あ、……」 「俺で良けりゃぶつかって来い」 「っ……!」

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