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「今の内ならまだ間に合う。……飛弦を俺のような目に遭わせたくないんだ」 「亜蓮、……」 「飛弦には、楽しいことだけ考えていて欲しい。どうしたら男が悦ぶか、どうしたら百円でも余分な金が稼げるかなんて、絶対に考えて欲しくない……!」  ――瞬間、体中が温かな毛布に包まれた気がした。 「皇、牙……?」  俺を抱きしめる腕。鼓動する胸。手のひら、指先まで……皇牙の温もりが、優しく、宥めるように俺の全てを包み込む。 「……調子狂うぜ、亜蓮。お前が言ってるのは飛弦のことだけじゃねえだろ。……子供のことを言われると、辛い」  俺の肩に預けていた頭を持ち上げた皇牙が、俺の目を真っ直ぐに見つめて言った。 「だけど、言われて目が覚めた。……必ず何とかする。約束するよ」 「皇牙」 「誓ってもいい。必ずだ」 「………」 「だからもう、泣くな」  重なった唇からは、さっき三人で食べたパンケーキの優しい味がした。 「ん、……」  絡む舌からはシロップの味が。甘くて、とろけそうな、愛しい味……。俺は皇牙の体重に押されるままベッドに身を沈め、その逞しい体をかき抱いた。 「は、……あ、ぁ……」  背中のトライバルに爪をたて、強く皇牙を引き寄せる。俺の顎から喉に激しいキスを落として行く皇牙が、少し笑って首輪の鎖を軽く握った。 「こんな時でもチェーン付きか」 「……駄目か」 「構わねえさ。好きなだけ俺を縛れよ、亜蓮」 「……ん、あっ……」  捲られたシャツの中に皇牙の手が滑り込んだ。とっくにバレている俺の弱点を指先で捏ねながら、皇牙が頬や唇にキスを繰り返す。ただの処理でも強引でもない、この街に来て初めて受ける愛撫。  その相手が皇牙で良かった――。 「あっ……!」 「悪い、急だったか」 「違う、驚いただけ……」  下着の中へ入ってきた皇牙の手が、優しく俺のそれを握った。ここに来るまではまだるっこしい刺激なんて大嫌いだった俺の体なのに、今はそれが嬉しくて、気持ち良くて……。 「……あぁ、あ……」  手のひら全体で、俺の内股から脚の付け根、二つの膨らみに屹立したペニスの先端までを撫でられる。何度も、何度も……俺のそこを愛でるような動きで、皇牙が優しい愛撫をくれる。  つま先に引っかけた下着をベッドの下へ落とし、俺は両脚を広げ、下から皇牙の肩や胸へ口付けた。 「なあ、皇牙も脱いで、……」  口元で笑って、皇牙が自分のベルトを外した。……初めて見る皇牙の男の部分に、思わず息を飲んでしまう。 「……想像通りデカい」 「ビビったか?」 「ちょっとだけ」  目尻の涙を拭って、皇牙がまた俺の頬にキスをする。俺達は互いのそこに手を伸ばし、呼吸を荒くさせながら激しく求め合った。 「は、あぁ、……あ」 「亜蓮、……綺麗だぜ、亜蓮」 「こ、皇牙、も……」  雄と雄の屹立同士を擦り合わせながら、俺達は何度もキスをした。ダチュラでもこんな風にパフォーマンスしているカップルのストリッパーがいたっけ。 俺達のこれは仕事じゃない。誰かに見せつけるためでも、エロティックな気分を盛り上げるためでもない。  ただ互いが欲しくて、求め合っているだけだ――そう思いたい。

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