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「どっちにしろ、男としてはちょっと嬉しいけどな」
「んっ、んぁ……、でも……」
例え心と体に今までと違う変化が起きているのだとしても、今の俺の気持ちは皇牙とセックスがしたい、それだけだ。性欲を満たすためだけじゃなくて、この世界で皇牙との繋がりを感じることができた今日、素直に彼に抱かれたいと――思っただけだ。
だから別に、初めてだろうが処女だろうがどうでもいい。そんなのは些細な問題だ。
「やめ、るなよ……皇牙。俺は大丈夫、だから……」
「血が出てるっての。今日は止めといた方がいい」
「………」
俺は滲んだ涙を乱暴に拭い、その手をベッドに叩きつけた。
「そんなに怒るなって、お前の体が心配なだけだ。もちろん仕事に支障が出るからって理由じゃねえぞ」
そうしていつもの不敵な笑みで俺を見つめながら、皇牙がすっかり萎えてしまった俺のそれを握って言った。
「これで順番が守れるだろ。今日は俺がしたかったこと、やらせろよ」
「――あっ!」
形の良い唇に呑み込まれて行く、俺の男の証。空気にさらされ続けて少し冷えていたそれが、皇牙の口の中、熱い舌で音を立てて蹂躙される。
「ふっ、ぅ……。んぁっ、あ、あぁ……」
体の芯が痺れるほどの快感だった。俺の体が真っ新な状態に戻ったのなら、こうして口でされるのも初めての経験ということになる。
「ああぁっ!」
広げた脚の付け根が痙攣し、宙を蹴るつま先が反り返る。咥えられたペニスに甘く強烈な刺激が走り、腰が、胸が、震えて仕方ない――。
「こ、うが……! 皇牙っ、あぁ……!」
身をくねらせる度に鎖が音を立てる。喉の奥から乾いた息が漏れ、全身の毛穴から汗が噴き出てくる。こんなに気持ち良いものだったっけ……どうしても以前の刺激が思い出せない。
「――ん、あっ……。イッ、きそ……!」
皇牙が舌で俺のそれを弄ぶように撫で回し、再び先端から咥え込んできた。先から側面、根元まで、俺のペニスにたっぷりと皇牙の唾液が絡み付く。溶けてしまいそうなほどに熱くて、もう一秒も我慢できなくて、……
「皇牙、あぁ……! イくっ……!」
その瞬間、俺は鎖を強く握りしめた――。
………。
思い出したんだ。俺がこの鎖を付けている理由を。
パフォーマンスでも、アイデンティティでもない。俺がこの鎖に託していたのは、「自由」への憧れ。
どこにも繋がれていない鎖は、俺が何にも縛られていない証。
時に誰かに握られることはあっても、決して俺の自由までは渡さないという意思表示。
この鎖は俺の心そのもの。自由への憧れと魂の防衛を意味する、大切な俺のプライド。
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