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 翌日―― 「………」 「亜蓮。ちょっと余計なこと考えてるね」 「え? そ、そんなことはない……」  スタッフルームの練習スペースでポールに寄りかかっていると、ステラが目を細めて「コラ」と俺を叱った。 「教えて欲しいって言うから教えにきたのに、亜蓮、うわの空」 「悪い、……ちょっと考え事してたのは事実」 「少し休憩にしようか」  ステラにレッグハングとニーロックの練習を見てもらいたいと言ったのは俺だ。新しい技を覚えられると思って、あんなに楽しみにしていたのに。  どうしても、昨夜のことが頭をちらついてしまう。 「………」  数え切れないほど男を受け入れてきたはずの、この体。最後に寝た男の顔は忘れても、確実にそれ自体をしたのは覚えている。  俺にはセックスしかなかった。金だって、ストリップで男を惹き付けて結局はセックスで稼いでいた。一晩で五人以上相手にしたこともある。金のために自分から誰かを誘うことだってあった。  この知らない街に来た理由や方法が、もしも人知を超えた力によるものだとしたら。  体と心の変化はもしかしたら、俺への――再生のチャンスなのかもしれない。 「あ、皇牙。お疲れ」 「おう、お疲れステラ。ライ見たか? 連絡しても出ねえんだ」 「見てない。どっかで寝てるんじゃないの」 「だろうな」  スタッフルームに入って来た皇牙が、壁に背を付けて座り込む俺を見て「おっ」と声をあげた。 「よう、亜蓮。練習してたのか」 「……うん」 「ポールダンスなんて、俺には逆立ちしても出来ねえからな。いっちょ見せてくれよ」 「皇牙は、筋肉の無駄遣い」  ステラがくすくすと笑って言った。 「亜蓮、さっきのやってみて、皇牙に見せてあげて」 「あ、ああ」  立ち上がり、タオルで手汗を拭いてからマットに上がってポールを握る。  軽く跳ねてよじ登り、右膝をポールにかけて左脚を真っ直ぐ伸ばし、握っていたポールを離して下半身から上体を仰向けでゆっくりと下へ倒す。右の膝と太股裏の力だけで体重を支え、体を逆さまにさせる。レッグハングはトリック技の基本だ。 「亜蓮。左脚をもっと美しく、ピンと伸ばして」 「や、……やってる」 「両手を優雅に広げて、鳥のように、無重力を感じて」  ステラが「アン・ドゥ・トロワ」と的外れなリズムを取って手を叩く。腕組みをした皇牙が俺の元まで来て、「大したモンだな」と感嘆の溜息を漏らした。  これまでエロいストリップしかしてこなかった俺は、ポールダンスなんて数える程度しかやったことがない。出来る技はブラスモンキーだけで、ポールを両手で握ってかつ腕の力を借りないと、脚だけでは体重を支えられなかった。  ステラに鍛え方を教わったお陰で、何とか基本のレッグハングは出来るようになったものの。 「亜蓮。そこからニーロック」 「ぐ、……」  下にだらりと下げた上体を持ち上げるだけでも一苦労だ。一旦伸ばした手でポールを握り、ひと呼吸つく。 「休んでても音楽は止まらないよ」 「わ、分かってるって……」

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