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「ああ、リカちゃんのこと?」 「リカちゃん?」 「リカルド。皇牙の元パートナーね。飛弦のパパで、今はカフェ店員やってる。……別に上手く行ってるも何も……今は普通に友達、って感じなんじゃない?」 「あっちは実家に戻ったんだろ。その……生活は大丈夫なのかなって」 「関係ないね」  意外にもライが吐き捨てるように言って、土足のままテーブルに脚を乗せた。 「そんなの承知で皇牙の元を離れたんだからさ。おまけに離婚してすぐ別の男と付き合い出して、これがまた酒飲みの浮気性。皇牙の足元にも及ばないのに、何でそんな男に惚れるかねぇ……」  どこの世界にも駄目男に惚れる奴は一定数いるということだろう。皇牙と離婚してまでそっちを選んだというなら、見た目や稼ぎ以外のどこかに惹かれるものがあったというだけのことだ。 「相手のジジイも、どうせ皇牙の金が目当てでリカちゃんと一緒になったんじゃないかな。飛弦だってまだ子供なのに、あんな父親にもなれないような男と四六時中一緒にいるなんて可哀想だ。……と言っても、皇牙は仕事があるから飛弦の面倒見られないんだけどさぁ」  飛弦のために毎月結構な額をリカルドに渡しているという皇牙。恐らくは、彼ら家族の分の生活費までそこに上乗せしている。  金には困っていないはずなのに、どうして飛弦は働きたいなんて言ったのだろう。  どうしてあの夜リカルドは、疲れた顔をしているように見えたんだろう。  あの夜、二人は何を言い合っていたんだろう。 「……ああ」  酒飲みで浮気性の再婚相手。……答えは明白だ。  俺は舌打ちして、ライと同じようにテーブルにブーツを乗せた。 「皇牙の金で自分だけ贅沢三昧ってことか。……汚ねえ奴」 「そんな男がいっぱいいるから、孤児だって増える。この街の闇だよ」 「………」 「実はさ、内緒だよ」 「え?」  ライが俺の耳に唇を寄せ、囁く。 「前にインタビューで、亜蓮が『孤児院を建てたい』って言っただろ」 「ああ、あれは……」 「それって、皇牙の夢でもあったんだ」 「え?」 「長い目で見れば叶わない夢じゃないけど、実現するには莫大な時間と金がかかる。その間にも孤児は増える一方だ。だから皇牙は孤児達をスカウトして、ダチュラで働かせてる。グラス洗いでも呼び込みでも、何でもさせてる。もちろん働く時間や、エッチな物は見せないように従業員みんなで努力してるけどね」  今日も店の外やキッチンにいた、あの子供達。大人びたスーツを着て、愛想を振りまいていた少年達――。彼らの顔が、ふわりと頭に浮かんだ。 「働かせるのは簡単だし、この街のルールとか危険なことは教えてあげられるけど……。俺達は勉強は教えられない。だから資格のある大人を集めて、その子達が住んで食って学べるような場所をさ、皇牙は作ろうとしてるんだよ」  俺は額に手を置いて唇を噛んだ。 「………」

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