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「亜蓮。このことは絶対に秘密だからね。今のところ俺とお前しか知らない」
「どうして秘密なんだ? 従業員全員に知らせれば、それだけ多くの協力が集まるのに」
「この街じゃ子供は最大の弱味になる。ライバル店のゲス野郎なんかに皇牙の計画が知られでもしたら、子供を使って脅されるに決まってるんだ」
「そんな……じゃあ、飛弦なんか一番危険なんじゃ……」
「飛弦には二十四時間、常に二人以上の監視が付いてるよ。このことはリカルドも知らない。ウチで働いてる子は従業員達の子供ってことにしていて、皇牙とは関係ないと思われてるから安全」
普段は子供の存在を気にもかけていないくせに、誰かを潰す時になればとことん子供を利用するということか。つくづく腐った連中の考えそうなことだ。
俺はテーブルに置いていた足を下ろし、ソファから立ち上がった。
「おい、どこ行くんだ亜蓮。もう少し飲もうよ、休憩中だろ」
「……踊ってくる」
そのままニコラ達が入った鳥かごの横を通り過ぎ、目が合ったステラのウィンクに微笑で応え、階段の中央を使って一階へ降りる。どこか空いているステージはと思って辺りを見回したが、どうやら今はどこも満席のようだ。
ダチュラのエントランスゲートの外には今日も何人かの子供達がいた。黒服の従業員に頭を撫でられ、嬉しそうに笑っている。ちょっとしたダンスやマジックを披露し、ゲート前に並ぶ客から拍手やお菓子をもらっている子もいた。
楽しそうだった。彼らは皆、笑っていた。
「………」
ゲートに背を向け、水槽ステージの間を通り一階フロアの奥へと進む。ビロードのカーテンに仕切られた奥のスペースでは、別の場所より少しハードなプレイが行なわれていた。
「あぁっ……!」
妖しい形の木馬に跨ったレザー姿の男が、自分よりずっと小柄な青年に鞭で叩かれている。
「ん、あ……もっと強く……焦らさないで、……」
磔にされたぼんやり顔のタトゥー青年が、左右から別の男に乳首を吸われて悶えている。
「あは、すっごい変態顔」
背中に悪魔の翼を生やした全裸の青年が、床に横たわった男の顔の上に跨りペニスを擦り付けている。そこへ違う男がやって来ると、青年が躊躇いなくその男と濃厚なキスを交わし始めた。
彼らもまた楽しそうだ。子供達とは別の役割をそれぞれが演じ、或いは何かを忘れるために快楽に陶酔し、世界に身を委ねている。
そんな世界の狭間を、俺は彼に会うため真っ直ぐに歩き出した。
「あぁ……チェーン・ストリッパー。僕と楽しむ?」
「ハイ、亜蓮。今日も綺麗だね」
群がってくる男達を交わしながら、俺は更に奥へと進んで行く。このフロアの一番奥はVIP用のプライベート・ルームになっているのだ。
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