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 激しく鼓動する俺の左胸に、皇牙の指先が触れた。 「ここにある熱い気持ちも、頭の中で考えてることも。全部含めて、俺はお前のことをいい男だと思ってるぜ?」 「………」 「処女だしな」 「ば、馬鹿野郎。それは……」 「何でお前の体がそうなったか、俺なりに考えたんだけどよ」  俺の前髪をかき分けた皇牙の指が、そのまま髪を耳にかける。 「お前が元の世界からコッチに来る時に何らかの力が働いて、この街で生きている本来の亜蓮に戻ったんじゃねえかなって」 「どういうことだ?」 「お前がいた新宿と、この世界の新宿。どっちにも亜蓮という人間の存在は許されていて、たまたまお前は別の新宿に生まれた。そこでのお前は子供の頃から虐げられ、夜の世界でやさぐれていた」  揺らいだ視界の中で笑う皇牙は綺麗だった。 「だけどこの世界でのお前は……子供好きで、自分の体を守って、ちゃんと人を好きになれている。そして――」 「………」 「自分のストリップに情熱と誇りを持っている」  溢れた涙が零れるより早く、俺達は唇を重ね合った。  深く、深く……互いの全てを求めるように、繋がった心をより頑丈に絡め合うように。 「ん、う……」  皇牙の手が俺の後頭部と腰を支え、自分の体へ強く密着させる。温かくて熱くて、切なさに遅れて涙が零れた。  舌が絡む音に胸が高鳴る。同時に皇牙が俺の鎖を握る音がして、更に体中が熱くなった。  握られてもいい。皇牙になら。皇牙ならこの鎖を握って、俺を永遠に支配してくれたって構わない。 「亜蓮……」  俺が初めて好きになった男だから。 「亜蓮、……これまでの自分がどんな奴だったかなんて関係ない。そんなものいつでも、幾らでもやり直せる」  俺が初めてを捧げたいと思えた男だから。 「自分を認めるのがお前自身なら、これからどう生きていくかもお前次第なんだ」 「皇、牙……」 「人生はお前だけの物。『こうありたい』と願うなら、素直にそう生きればいい。やりたいことをやれ、亜蓮」 「あっ……!」 「俺も、したいことをして生きている。……今この瞬間もな」  乳首に舌を這わせながら、皇牙が不敵に笑う。それは揺るぎない自信に満ちた、俺の大好きな笑い方だった。 「ん、あ……。皇牙……」 「いつも出してるくせに、乳首が弱いなお前は。無防備過ぎじゃねえか?」 「……衣装は、皇牙が……決めてるだろ……」  確かにそうだ、と皇牙が肩を竦めて笑った。  ゆっくりと口の中で乳首を愛撫され、同時に尻から腰、背中を優しく撫でられる。気が遠くなるような甘い快楽に、俺は天井のシャンデリアを仰いで大きく息をついた。 「あぁ……、ん、ぁ……」  体は、新鮮な刺激に驚くほどの反応を見せている。皇牙の手、指、唇に舌も――全てが熱くて気持ち良い。触れられている部分だけではなく、心の中、更には細胞の一つ一つまでも。  今すぐ欲しい。俺の全てを捧げたいと思うように。皇牙の全てが、欲しい――。 「――終わり」 「はっ、……はぁ?」  唐突に皇牙が俺の体から離した両手を大きく広げて、ソファにもたれかかった。 「な、何でだよっ……? ここまでされて、俺はっ……」 「もうすぐステージの時間だろ。一発抜いてスッキリするよりは、火照ったまま踊った方が色っぽい」 「……やっぱり俺のこと、商売道具としてしか見てないってこと」  皇牙が「違げえよ」と意地悪く笑って、両手で包んだ俺の頬を引き寄せ鼻の頭にキスをする。 「これは仕事の邪魔をした罰だ。後で倍にして返してやるやら覚悟しとけ」 「……う」

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