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「最高のニーロックだったね。おめでとう、亜蓮」
「ありがとうステラ。お前が教えてくれたお陰だ」
「亜蓮はやっぱりすげえ! めちゃくちゃカッコ良かった! バキュンてするやつ、俺も今度やっていい?」
「ああ、別にいいけど……」
カウンター席で酒を飲む俺の左右では、ニコラとステラが笑っている。両手に花状態だ。通り過ぎる男達は皆、そんな俺達を見てポーッとしていた。
「今度、三人でちゃんとしたバーに飲みに行こうぜ。俺、いい店知ってるんだ!」
ニコラが脚をぶらつかせながら俺の肩を抱くと、ステラが「どうせあのお子様バーだね」と唇の端を歪めて笑った。
「……それより亜蓮、どうして皇牙に抱っこされて登場したの?」
ステラに言われて思わずプライベート・ルームでのことを思い出し、赤くなってしまう。それを酒のせいにしながら、俺は「ただの演出だって」と素っ気なく答えた。
「皇牙と亜蓮なら、大人っぽくて似合ってるから良いと思うよ」
「それ何か、前にニコラにも言われたな。大人っていっても、俺と皇牙の齢の差って結構離れてるんだぞ」
「二十歳以上は皆同じ大人だよ」
それはどうなんだろうなと思って苦笑し、グラスに口を付けたその時。
「………」
フロアの隅に知っている顔が見えて、俺はスツールに座ったままカウンターの向こう側を見るため首を伸ばした。
「どうしたの、亜蓮?」
「いや、……ちょっと」
そのスーツ姿の男は客である小柄な青年と抱き合い、熱っぽく視線を絡め合っていた。当たり前のように口付けを交わし、少しだけ微笑み合ってからまた深くキスをする――。
「っ……!」
「あ、亜蓮? どうしたんだよ、亜蓮」
俺は弾かれたようにカウンターから離れ、男の元へと駆けて行った。
「おい、あんた! 何してる!」
「………」
男が俺に視線を向け、目だけを細めて笑う。間違いない。前に俺もこのクラブで会ってキスをされた、あの男――闇示だ。
「ふ、あ……」
頬を赤くさせて闇示にもたれかかる青年。レッド・タランチュラを飲んだ時の高揚感が異様な寒気となって記憶に戻り、俺は闇示と青年の間に腕を入れて二人を引き剥がそうとした。
「何だ、チェーン・ストリッパー。いきなり現れてどういうつもりだ?」
「分かってるだろ。皇牙に言われたはずだ、二度とこのクラブで妙な真似は……」
「俺は彼と楽しんでいただけだが? 周りも皆そうしている」
困ったように肩を竦めた闇示の胸に頬を寄せながら、青年が俺を見て言った。
「何か勘違いしてる? 僕から闇示さんを誘ったんだよ。この後ホテルで特別濃厚なセックスするの。朝までね」
青年の顔は蕩けてはいるが、それはただ闇示とのキスに酔っているだけのようにも見える。
俺は二人の間に差し入れた手を引っ込め、黙ったまま闇示をじっと睨み据えた。
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