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二人分の体重を受けたベッドが沈み、俺達は解き放たれた獣のように互いの唇を貪り合った。皇牙の背中をかき抱き、開いた脚の間で彼の体を受け入れる。強く、もっと強く――一秒ごとに心音と息使いは激しさを増し、一秒ごとに皇牙が愛しくて堪らなくなる。
「亜蓮、……」
俺の喉から首筋に皇牙の熱い舌が這う。感じるのは痺れるような刺激じゃない。ただひたすらに熱い甘さ、それから蕩けるような愛情。
「あ……」
俺を気遣う愛撫。唇と手の動きは激しいのに優しく、震えてしまうのに酷く安心できる。俺は乳首を啄む皇牙の頭を抱きしめ、一本一本が愛しいその黒髪に指を絡ませた。
「は、あぁ……、皇牙っ……」
突起を味わうように蠢く舌に、俺の背中が反り返る。元の新宿を含めこれまで経験してきた中で一番、最高の快楽だった。
「皇牙、脱いで……一緒に……」
与えるだけじゃなく、与えてもらうだけじゃない。本来のセックスとは互いの心と体を一つにして、より深いところで愛し合う行為だ。金のためじゃない。ただ快楽を求めるものでも。
俺は皇牙の肩や胸板にキスを繰り返しながら、ゆっくりと起き上がって皇牙の体をベッドに寝かせた。
「無理しなくていいぞ、亜蓮……」
「……やり方は憶えてる。この世界でするのは、皇牙が初めて」
緩く微笑んだ皇牙が、俺の頭を撫でてくれた。
皇牙のそこへ顔を落として行き、上を向いた男の証に唇を被せる。俺の頭を撫でる手付きはどこまでも優しく、漏れる吐息に俺も嬉しくなった。
「はぁ、……」
下から上へと曲線を舌で撫で、先端から零れそうになった体液を啄む。再び唇を被せ、奥まで深く咥え込む。まるで皇牙の体そのものを愛撫しているみたいだ。愛しくて切なくて、形容し難い歓びに俺の頬を涙が伝った。
――大好きだ。皇牙。
この世界で一番……いや、元いた世界も、他にまだ存在しているかもしれない次元の世界も全て含め、ただ一人俺が愛した男。
ただ一人、俺を愛してくれた男。
「亜蓮……」
俺の名前を愛しげに呼んでくれる男――。
顎を揺すられて皇牙のそれから唇を離し、俺は唇から垂れた体液を拭って彼の顔を覗き込んだ。
「愛してる、亜蓮」
「俺も、……皇牙。愛してる……。愛してる」
俺の屹立に皇牙の指が絡む。俺はあぐらをかいた皇牙の上に乗り、皇牙は俺の体を支え、互いを抱きしめ合う。俺達はキスを交わしながら無意識に互いのそこを擦り付け合い、息を荒げ、そんな興奮状態にふと気付いて小さく笑い合った。
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