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「……あっ、あ……。あ、ぅ……」
「その声、すげえ興奮する」
「ば、馬鹿っ……あぁ、ぁ……」
上下に揺れる体。擦られ、貫かれる体。皇牙に愛され、大切に触れられる体――。
「倒すぞ」
「――あぁっ!」
ベッドの上で抱き合い、何度も、何度も、皇牙が俺の中を愛撫する。眉根を寄せて喘ぐ俺の頬を撫でながら、皇牙がより深く強く、俺の中を探る。
気が遠くなるほどの幸福感。愛されるって、こんなに幸せな気持ちになれるんだ。
「亜蓮っ、……」
打ち付けられる腰と、筋肉の陰影が浮かぶ腹筋。自身の体重を支える逞しい腕。そして俺の中を貫き、一つになる歓びを教えてくれる皇牙の男の証。
「亜蓮、愛してる……」
そして、囁き。
「ふあっ、……あ、皇牙……」
「お前の全てを愛してるよ……」
声も――飛び散る汗も。吐息も視線も、皇牙を形成する細胞までも。
「俺も愛してる……! 皇牙、……大好きっ……!」
「亜蓮っ……!」
その瞬間はこれ以上ないほどお互いに強く抱き合い、俺達は文字通り一つになって人生最高の幸せを迎えた。
―――。
「……前の旦那がさ」
汗ばんだ肌。呼吸を繰り返す胸。
皇牙が俺の頭の下に腕を滑り込ませながら言った。
「再婚相手が最悪の酒乱で、だいぶ殴られてたらしい。庇う度に飛弦もとばっちりを受けてて、ようやく離婚が決まったそうだ。これから諸々の件で裁判にもなる。……飛弦を俺に預けたいって、頭下げられてな」
「俺がステージに立ってた時、外に出てくるって……その話してたのか……」
「まあな」
俺は皇牙の上腕に頭を乗せ、彼の温もりを感じながら静かに目を閉じる。
「お前とならやっていける。亜蓮、……俺と一緒になってくれるか」
「………」
重なった唇も、閉じた瞼の中で溢れた涙も。
感じる全てが、温かかった。
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