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第3話

理科室のドアの前に来たはいいものの、裕太は中々動かずにいた。 「何してんの?早く開けろよ」 「分かってる」 そう言いつつ、やはり勇気が出ない。 もしこのドアを開けた瞬間、何か良からぬモノが襲ってきたら―――― つい先日、テレビでやっていた心霊番組をチラッと見てしまったせいもあるだろうが、どうしてもそんな不安が拭えずにいた。 「裕太?」 「.......」 「お前やっぱ怖いん...」 「こここ怖くねーよ!!!」 バッと弘弥の方を向き、精一杯の虚勢を張る。 「...じゃあ」 「分かってるって」 扉にそっと手をかけ、深呼吸をする。 「っ、行くぞ」 3、2、1。 扉を勢いよく引く。...が。 「...あれ」 開かない。 それもそのはず。学校は本当なら誰もいない時間。開いている方がおかしいのだ。 「開かねーじゃん。...なんだ!ビビって損したー!」 裕太は一歩下がって胸を撫で下ろす。 「まぁそりゃあ普通閉まってるよな」 言いながら、弘弥もドアが開くか試してみるが、やはり開かなかった。 「何だよ!お前分かっててここまで来たのかよ!」 「いや、噂はちゃんとあるよ。ダメ元で来てみた。あとは...」 そう弘弥は言いかけて、裕太の方を見る。 「お前の反応が面白かったから」 クスクスと笑い出す弘弥。 「お前なぁ!!人を馬鹿にしやがって!!」 そんなに俺をおちょくるのが楽しいかこいつは! 弘弥に揶揄われた事に気付き、羞恥で顔を赤くしながら弘弥に詰め寄った。 その時。 ガチャン。 その音に2人は言い争いを止め、一斉にドアの方を向く。ドアには何も変化は無い。裕太がゆっくりと口を開いた。 「...今の、聞こえた?」 「...ああ」 「...でもさっき開かなかったよな」 ドアを凝視する裕太。 そんな裕太を横目に、弘弥がゆっくりと開閉を試みる。 「...あ」 ドアは弘弥の手に合わせて開いた。 思わず2人は顔を見合わせる。 裕太の口がゆっくりと開く。 「...どうする?」 「どうするって?」 「やっぱり行くのか?」 「ここで行かない選択肢があるとでも?」 期待を隠しきれていない表情で弘弥は言う。 「...ですよね」 弘弥の様子に、もう抗うことを諦めた裕太は肩をがっくりと落とした。 「あ、やっぱ裕太くん怖い...」 「もういいわ!!」 弘弥の相変わらずのおちょくりに反発しながら、2人は闇に包まれた理科室へと入って行った。 ――そこで何が待ち受けているのかも知らずに。

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