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第5話

 今日の昼休みのことだ。教科準備室を訪ねてきた戸神に、折り入って相談したいことがあると言われて、ふたつ返事で応じたのが失敗だった。  待ち合わせの場所に旧校舎の音楽室を指定された時点で、何か企んでいる、と怪しむべきだったのだ。  案の定、音楽室に入って引き戸を閉めたとたん首筋に衝撃が走ってくずおれた。  得意げにスタンガンにくちづける戸神の姿が、おぼろに霞みゆく視界に映り、意識が朦朧としている間に拘束されて現在に至る、という次第だ。 「生徒がお願いしてるのにシカトこくのって、ひどくない? だったら……」  仁科の鼻先でリコーダーをひと振りすると、厳かに言葉を継いだ。 「選択権は俺のものだ。ここで、リコーダーを吹いてもらう」    とは具体的にを指しているのか、こういう形で注釈が加えられる。  スラックスの縫い目に沿って谷間を掃き下ろしていった指が蕾に達し、そのぐるりに〝recorder〟とさらさらと綴る。 〝ここでリコーダーを吹く〟。  おうむ返しに呟くと、(みだ)りがわしくも禍々しい響きに皮膚が粟立つ。仁科は、ぎくしゃくと首をねじ曲げた。  リコーダーの穴を押さえる要領で窄まりをつついてくる戸神を睨むと、ペナルティを科すと言わんばかりだ。指先に力が加わり、陰門に下着が食い入った。 「……ぅ、ぅぅ……!」  呻き声は、ことごとく猿ぐつわに吸いとられる。くいくいと指が動くのにともなって、酸っぱいものが喉元にこみ上げてくる。  仁科は今さらめいて猛然ともがきはじめた。もっとも、それは虚しい抵抗だ。ネクタイがよじれ、ワイシャツのボタンがひとつ弾け飛んで、なめらかな肌がちらついた。  首を打ち振るたびに生まれつき茶色っぽい髪が縦横(じゅうおう)(くう)を切り裂き、白皙の額に張りつく。  涼やかな目許は怒りと羞恥心をない交ぜに赤らみ、逆になまめかしい。

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