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第6話
と、右の足首に限って粘着テープが剝ぎ取られて、教卓の脚から離れた。
次いでベルトが外された。スラックスと下着がひとまとめにずり下ろされたのにつづいて、右足から抜き取られた。
揶揄をひそませた口笛に、あられもない姿をさらしていることを否応なしに意識させられる。
臀部はワイシャツの裾でかろうじて隠れるが、ペニスのほうは見る角度によっては丸見えだ。
左足は依然として縛められているために、足をぴたりと閉じるのは困難だ。
なぜ、こんな仕打ちを受けなければならないのだ。仁科は、ぎゅっと目をつぶった。
知らない間に戸神の恨みを買って、その仕返しがこの事態だというのか? だが、丹念に記憶をたぐってみても思い当たる節がない。
ワイシャツの裾がたくしあげられて、粘着テープで背中に留めつけられた。尻の割れ目がすうすうするのに比して、腋窩 はじっとりと汗ばむ。
「板書するときは当然、後ろを向くだろ。洋服の上から想像していた以上に小さくて、リコーダーを吹いてもらいがいのある尻だな」
掌がむき出しの尻たぶを這いまわり、仁科は躰を硬くした。たとえ言いがかりに等しい理由であっても、戸神が復讐心に燃えて殴りかかってくるなら対処の仕様がある。
ところが、この状況はマニュアルのどこにも記載されていない。そう、ひと回りも年下の男子高校生がこの場の主導権を握っているのだ。
仁科は身震いしながら、顎を教卓にこすりつけた。猿ぐつわをほどいて、戸神を諄々と諭して、正気に立ち返らせる方向に持っていくのだ。
ネクタイがずれて、ハンカチを吐き出す寸前までいった。だが、すぐさま元通りの細工がほどこされる。
おまけに戸神がおぶさるように背中に胸をくっつけてきて、忍び笑いに襟髪がそよぐ。
狡知に長 けた生徒は、つっかい棒を支 うふうに太腿の間に膝をこじ入れてきた。両足の開きぐあいにこだわりを見せておいて、仁科の肩越しに教卓に手をついた。
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