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第11話
指切り、というふうに戸神が右手の小指を立てた。それから吹き口が陰嚢側の内壁をなぞりあげるように角度を調節しながら、リコーダーを突き入れてきた。
「……っ、つ……ぅ、うううう……!」
激痛が全身を貫き、膝ががくがくと震える。仁科は口を真一文字に結んで、からくも悲鳴を嚙み殺した。
戸神はリコーダーを握りなおした。そして満員の観客を前にした司会者さながら、優雅に一礼してみせる。
「みなさま、長らくお待たせしました。演奏は仁科貴明、どうぞお楽しみくださいませ」
「ふざけるのは、いいかげんにしなさい……ぐ……っ!」
小うるさい教師を黙らせるには、こうするに限る。手っ取り早くリコーダーが押し込まれたせつな、ほっそりした肢体が極限まで反り返った。
「フルートよりリコーダーのほうが吹くのは簡単だろ?」
顎を掬いとられた。ななめ後ろを振り仰ぐ形に首をねじ曲げられると同時に、鋭い視線に射すくめられた。
唇がわななき、仁科は教卓をがたつかせながら精いっぱい横にずれた。
明朗な生徒、と万人が認める戸神にこんな残忍な一面があるなんて夢想だにしなかった。
ひと回りも年上の男性教諭を慰み者にするマニアックさは別として、こう言っては語弊があるが、単純に犯そうとするならまだ心情を理解できる。
ところが学生ズボンの中心を盗み見てみると、そこは平らだ。
とりもなおさず戸神には、仁科を性欲の捌け口にする以外の目的があるということで、彼の思惑通りに事が運んでいるだろうさまに怖気をふるう。
焦らすな、と急かすふうにリコーダーが行きつ戻りつするにしたがって潤滑剤が泡立つ。
淫靡な水音がにわかに高まり、屈辱感と羞じらいをない交ぜに頬が紅潮すれば、好むと好まざるとにかかわらず官能がくゆりたつ。
後孔がじんじんと疼き、だが泣きを入れて戸神をつけあがらせるのは真っ平だ。ゆえに血がにじむほどきつく唇を嚙みしめた。
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