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第12話

 苦悩に満ちた表情にひとしきり見入ったあとで、戸神は笑みくずれた。仁科の耳許に唇を寄せると、リコーダーを小刻みに動かしつつ耳たぶをかじる。  そして生徒指導部の主任教諭のように、厳しい声音で命じた。 「いきめ。いきんでリコーダーに空気を送り込んで吹き鳴らす。いきむんだ」 「冗談じゃない、断る……ひっ!」  リコーダーが入口のきわまで退き、再びえぐり込まれた。 「いきめ」。  それは、屁をひってみせろと命令しているに等しい。  絶望の色をたたえた瞳が、一転して怒りに燃え立つ。そこまで愚弄される謂れはない。たかが一生徒の分際で、なめた真似をしてもらっては困る。  と、自分を奮い立たせてもスマートフォンがひらひらすれば心がくじける。  さしずめ教育的指導ということか。ばしん! と平手で尻たぶを叩かれた。  仁科は呻き、いくぶん腰を落とした。とたんに腕がしなり、今ひとたび臀部で平手打ちが炸裂した。  振動が内奥に響き、吹き口が柔壁のあわいにひっそりと在る突起をすりあげていく。鈍い痛みが尻たぶを中心に広がり、だが、その底に得体の知れない感覚がひそんでいる。  双丘が熱を持ち、それでいて甘やかに痺れる。つづいて信じがたい変化が起きた。  そろそろと包皮がめくれて、ペニスが勃ちあがる兆しを見せている。  仁科は目を疑った。恥辱にまみれた一連の流れの中のどこに、劣情をそそられる要素がある……? 「勘が当たった。やっぱ先生って、さ」  意味深な忍び笑いが耳朶を打つ。更なる深みをめざしがてらリコーダーが先ほどの突起をノックしていけば、ペニスが跳ねた。 「くぅ……う……っ」  リコーダーが全部挿入(はい)るかどうか試してみよう。戸神がそんな考えにとり憑かれたら、冗談抜きに内臓破裂という最期を迎えることになるかもしれない。  尻の間からリコーダーが垂れ下がっている遺体が発見されれば、物笑いの種だ。

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