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第18話

 突きあげられるたびに、靴下と靴をきちんと履いている足が宙を搔く。その光景があまりにもシュールで、腹の底で笑いの虫が蠢く。  (こいねがわ)くは、たったいま地上から消え去ってしまいたい。  あらゆる苦しみを材料にこしらえたカクテルを飲み干したように、眉根に皺が寄る。そのくせ官能の中枢に狙いを定めて嬲りのめされると、襞がいやらしくさえずって、あられもなく腰がくねる。  被レイプ願望など、男に都合のよい神話にすぎないはず。なのに凌辱もののヒロインのごとく、快感を貪婪に味わおうとする自分の浅ましさに反吐が出るようだった。 「やめろ、戸神、やめてくれ……ぁ、っ!」  もちろん、聞き入れてもらえっこない。それどころか、いちだんと荒っぽく攻め入ってこられた。  俺に逆らえば、それ相応の報いを受けることになると肝に銘じておけ。そうと知らしめるように。  しずしずと暮色が迫る。下校する前にもうひとふんばり、とばかりに吹奏楽部がコンクールの課題曲を演奏し、勇壮なメロディが響き渡る。  夏休み中に取り壊される旧校舎の音楽室は、さながら戸神が()べる王国だ。だが、その外では〝日常〟がのどかに営まれているのだ。  あしたから三者面談だ。お宅の息子さんに強姦されましてね、と戸神の保護者に報告してやったら痛快だろう。窓に視線をさまよわせて、ぼんやりとそう思った。 「貴明、よそ見は禁止だ」  両手で頬を挟みつけられて、正面を向かされた。 「教師を呼び捨てにするな……ぁ、あ!」  (さね)をつつきのめされて、よがり声に溶けた。その拍子に雄渾をしたたかに締めつけてしまい、ペニスが蜜を降りこぼしながら躍った。  もう限界だ、これ以上、毒性の強い快楽に翻弄されつづけたら後戻りのできないところまでつれていかれてしまう。  ガムシャラに足をばたつかせると、ワイシャツの第一ボタンが手早く外された。  鎖骨の下に吸いつかれて、焼き印を押された家畜さながら接吻の花が鮮やかに咲いた。

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