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第19話

「隷従するのが根っから好きなマゾヒスト。それが貴明の本性だ。今後はマスをかくのも俺が許可したときに限 る。誓え」 「馬鹿な……ことを……ぅ、ぁううっ!」  かりっと鈴口をひっかかれた。 「勝手にやったらザーメンの濃度でわかる。約束を破ったときには当然、罰を与える」  眼鏡を弾ませて、仁科はかぶりを振った。ただし、断固拒否の姿勢を貫けば必ずや高い授業料を払うことになる。  リコーダーが視界をかすめる。今度はサキソホン、その次はトランペット。  戸神は、管楽器の鳴りぐあいを仁科の躰を用いて片っ端から確かめてみるくらいのことをやりかねない。自分で自分の首を絞めることになるとわかっていても、承服できることとできないことがある。  もっともスマートフォンをちらつかされると、打算が働く。ひとまず承諾したふりをして、保身を図るほうが大切だ。 「いいな、貴明。俺が、おまえの最初で最後の男だ」  返答如何(いかん)によっては、くり貫いてやる──。  そう匂わすように戸神は乳首を力いっぱいつねり、その一方で悦楽の核を昂ぶりで丹念にブラッシングする。飴と鞭を使い分ける、その堂に入りっぷりは、すでにその道のエキスパート顔負けだ。  魅入られる。イエスだな、と念を押されると、つられてうなずき返してしまうほどに。  戸神がにっこり笑った。あらためて契りを結ぶように、陽根を軸に組み敷いた躰をふたつにたたむ。 「ぅ、あ、っ……痛い、やめてくれ……!」  腰づかいが荒々しさを増せば、自分が単なる粘膜の塊に変じて戸神にまとわりつき、彼をぱくついている、という錯覚に陥る。  と同時に内奥の感覚が恐ろしく研ぎ澄まされていき、〝戸神の形〟を忠実に憶え込む。  今、戸神がひと回り膨張した。一滴、二滴と先走りがにじんで内壁にしみ入った……。  永劫とも思えるほど延々と貪られつづける。激しい情交に教卓ががたつき、学校指定の上履きがリノリウムの床にこすれて、きゅっきゅっと鳴る。

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