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第20話

 不意に我に返った。そうだ、いっぱしの口を利いても、相手は履物さえ校則に縛られている高校生じゃないか。  仁科は派手にずれた眼鏡を肩で押しあげると、(ほしいまま)にふるまう教え子を冷ややかに見据えた。  もっとも目縁に紅を()いたさまは煽情的で、ギアを切り替えたように抽送に加速がつく。 「裂ける……あ、裂ける……っ!」 「ガマン汁をだらだら垂らしといて、大げさだなあ」 「口を慎みなさい……ん、んん……っ!」  頭を打ち振ると、ペニスも一緒に跳ねる。捨て置かれたっきりなのに、今やはち切れそうになっているどころか、雨垂れのように蜜がしたたり落ちて(へそ)に溜まる。  その微かな振動が、はしゃぎっぱなしの内側に伝わると、いそいそと幹にじゃれつく。薄紅色の靄が立ち込めているような頭の隅っこで考える。  ()れ者になりさがるのは、まんざら悪くない──。  甘咬みを交えて耳許で囁かれた。 「今度は放送室で、マイクをオンにした状態で抱いてやるよ。生徒のチンポをがっつくとこを生中継で全校にお届けする。先生のファンに、ちょっとしたサービスだ」  仁科は、ぎょっと目を見開いた。デマカセに決まっているが、戸神ならやりかねない、と危惧するものがある。  一転して瞳がとろりと潤む。次回は乳首を開発する、と申し渡されている。宣言どおり乳首をいたぶられて狂態を演じる模様が実況放送されることがあれば、非難の的だ。  それでも、いや、リスクを冒すからこそ乳首に淫技が加えられる工程は、より素晴らしいものになるに違いない。  無意識のうちに舌なめずりをすれば、柔壁が甘やかにうねって覇者にしなだれかかる。 「く……っ」  凛々しい(おもて)を狼狽の色がよぎった。 〝特別授業〟の途中で講師役の自分が爆ぜる、という失態を犯しかけたのは、戸神としては不名誉なことだったのだろう。くやしさをにじませて双眸が剣吞に光り、そのぶん仁科を攻めて攻め抜く。

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