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第23話

「ん……んんんぅ……っ!」  お手本を示すように、砲身が出たり入ったりする。舌を掃きあげられて、仁科は反射的に鈴口を歯でこそげて返した。  戸神が思わずのように腰を引き気味にした隙に怒張を吐き出そうとすれば、渾身の力で頭を押さえ込まれた。  懸命に首を横に振れば、柔毛が鼻に入ってくしゃみが出そうになる。顎に睾丸がぶつかってくると、敗北感がつのる。  だいたい膝立ちの姿勢を保っておかないと横倒しになってしまいそうな体勢でしゃぶるなど、どだい無理な相談だ。  せめて戸神を捧げ持つことが許されるなら頬張りぐあいを加減できるはずだが、戸神は〝小テスト〟と称するもので仁科が合格点をとるまで両手を(いまし)める粘着テープを剝がすつもりはさらさらないようだ。 「もっと、うまそうな表情(かお)してねぶるんだ。でないとシラけて最初っからやり直しだ」    そう言うと、奥の手を出すようにスマートフォンをひらひらと振ってみせた。  仁科は肩口に頬をすりつけて眼鏡の位置を直した。厭わしいそれを、決死の覚悟で口に含みなおす。  戸神が昇りつめさえすれば、この苦役から解放される。呪文のようにそう唱えながら、ぎこちない舌づかいで口淫に励むうちに時間の概念は失われていった。  三十秒がすぎたのか、それとも十分が経過したのか。  顎も舌もだるくなった。それでも、ただもう一秒でも早く楽になりたい一心で舌を蠢かしつづけた。  もっとも、和毛(にこげ)が微風にそよぐと現実に引き戻される。どういう作用が働いているのかペニスは勃ちっぱなしで、恥知らずなそれを切り落としてしまいたいという衝動に駆られるほどだった。  さんざん醜態を演じたあとで明日から戸神にどう接すればよいのだ。戸神はきっと授業中に何度も仁科に意味ありげに微笑(わら)いかけ、あるいはスマートフォンをちらつかせて、手綱を引くのだ。  貴明、おまえは未来永劫、俺の奴隷だ──と。

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