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第35話

 ワイシャツがはためき、ちんまりとした双丘が見え隠れする。素肌のそこに反して、室内履きと靴下はきちんと履いている。  そのアンバランスさは嗜虐心をかき立ててやまない。現に戸神の双眸に剣吞な光が宿る。仁科という食材を吟味するように、また調理法を検討するように、ほっそりした肢体を()めまわしたすえに、 「では、なぞなぞの答えを発表しまぁす」  パンパカパーンとおどけながら乳首をもうひとつねりした。 「……ん、ぐ、ぅうう……っ!」  熟れた茱萸(ぐみ)のように赤く色づいた乳首が、すべらかな肌とコントラストをなす。仁科は前かがみになって胸を隠した。だが二の腕を摑まれて、まっすぐ立つように命じられる。  泣く泣くそうすると、 「正解は銀杏(ぎんなん)の殻割り器でした。ちょっと難しかったかな?」  糸くずを払うようなぞんざいさでもって、乳頭をひっぱられた。  冗談抜きに乳首をくり貫かれてしまうのではないか。仁科はあわてて後ろにずれ、するとさらに執拗に乳首をねじりあげられた。  ただでさえ梅雨時とあって蒸し暑い。白皙の(おもて)は脂汗に濡れ、そこで指が殻割り器に取って代わると、やわらかな感触に息をついた。 「貴明の乳首はちっちゃくってさ。やぁっと、いじりやすい大きさに育った」  重々しくうなずくと、乳首の画像がアップで表示されたスマートフォンを向けてきた。  いびつに膨らんでミニチュアサイズのカリフラワーといった形状に成り果てたさまが、グロテスクだ。仁科は顔を背け、それでいて視線は学生ズボンの尻ポケットに戻されたスマートフォンを追う。  ともあれ戸神が特別講師を務める今回の授業の第一のテーマは、これだ。 〝乳首の感度を高める〟。  丹念に下ごしらえがなされた結果、乳首はすさまじく敏感になっている。それは戸神の思惑通りで、右の乳首を優しくさすったかと思えば、左の乳首を殻割り器でひねる。  痛みという土壌に蒔かれた快感という種が芽ぐむよう、そうやって飴と鞭を巧みに使い分けるのが彼の方針とみえた。

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